2007年09月16日

[読了] 月光・暮坂 - 小島信夫後期作品集


物語のあらゆるコードから逸脱し続ける作品世界 (帯)
かつての作品の引用から、実在する家族や郷里の友人らとの関係のなかから、ひとつの物語が別の物語を生み出し、常に物語が増殖しつづける<開かれた>小説の世界。<思考の生理>によって形造られる作品は、自由闊達に動きながらも、完結することを拒み、いつしか混沌へと反転していく。メタ・フィクションともいえる実験的試み九篇を、『別れる理由』以降の作品を中心に自選。 (裏表紙)
後期の代表的な短編を集めた自選短編集。収録作は以下のとおり。

:: 返信(群像 1981年10月号)
:: 月光(群像 1982年4月号)
:: 合掌(群像 1983年1月号)
:: 白昼夢(群像 1983年11月号)
:: 落花の舞(群像 1988年6月号)
:: ブルーノ・タウトの椅子(文学界 1989年3月号)
:: 暮坂(群像 1994年2月号、5月号)
:: 天南星(文学界 1994年2月号)
:: その一週間(群像 1996年1月号)

練りこまれた構築美や展開の妙といったものとは全く無縁の(もしくは全く無縁であると思わせてしまう)小島文学の妙味を堪能できる作品ばかりが収められている。庄野潤三とのエピソードなどが盛り込まれた「暮坂」が白眉。「月光」のグルーヴ感もすごい。小島信夫は死ぬまで歩を止めず成長を続けた作家のひとりであり、晩年になればなるほど面白い小説を書いたのではないだろうか。この後期作品集を読むと漠然とではあるがそう実感せざるを得ない。意識しているのか無意識なのか、流れているのか流れていないのか。分析だけでは絶対にたどり着けない情念のような領域を彼はいつでも読み手に投げかけてくる。
posted by ノジマコブオ at 00:00| 読了